皆さんは、お子さんの将来に備えて貯金をしていますか?
貯金の理由は様々だと思います。子どもの「大学費用」のために。障害児のパパママさんは「親亡き後」のために貯金をしていらっしゃるというお話もよく伺います。中には、将来的な相続税を見越してお子さんやお孫さんに生前贈与を、と考えていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。
貯金理由や額は様々だと思いますが、共通して注意すべき点があります。
それは、子ども名義での貯金は、お子さんが成人した時点で贈与税が課税されてしまう可能性があるという点です!

年間110万円までなら非課税なんでしょ?大丈夫!知ってるよ!



その通り。でも、その認識だけだとちょっと危険かも。年間110万円以内の貯金でも贈与税を課税されるかもしれないよ!
子ども名義の貯金=名義口座 に関する注意点
贈与を行う時点の注意点
贈与を行う場合、注意していただきたい点がいくつかあります。しっかり対策すれば非課税でお子さんへの贈与(子ども名義の貯金等)が可能です!
年間の非課税枠を超えた場合
最初に年間110万円以内の贈与の定義を明確にしたいと思います。これは、同一年度に1人の被贈与人に対して110万円以内となっています。例えば、贈与を受けるお子さん1人に対して、祖父から年間60万円の贈与・父から年間60万円の贈与だと、合計で120万円となり課税対象です。


図1.贈与税の仕組み
年間110万円までが贈与税の非課税枠ですが、それを超えてしまった場合には贈与税の申告と納税を行う必要があります。原則、財産をもらった人が、もらった年の翌年の2月1日から3月15日までにすることになっています。期限内に納税しなかった場合、延滞税が課されるため、早めに対応することが重要です。
親が子ども名義の口座で貯金をしている場合、年間110万円までが贈与税の非課税枠になります。110万円を超える場合には、翌年の2月1日から3月15日までに税務署に贈与税の申告を行う義務があります。



未成年の場合は、親が申告だね!
年間の非課税枠を超えていない場合
贈与税の非課税枠は年間110万円です。
では、年間110万円以内の贈与であれば、問題がないかと言えばそうではありません。子ども名義で貯金する場合、子どもが成人した時点でその口座が贈与対象となります。つまり、年間110万円以内での贈与であっても、残高が非課税枠を超えた場合には贈与税が課税される可能性があります。
親が子ども名義の口座で貯金をしている場合、子どもが成人した時点でその口座が贈与対象となります。つまり、年間110万円以内での贈与であっても、残高が非課税枠を超えた場合には贈与税が課税される可能性があります。



子ども名義の通帳は、親が管理している=親の財産の一部 とみなされ課税される可能性があるんだよ。つまり、毎年30万円ずつの贈与でも17歳までで540万円。非課税枠を超えているね。



じゃあ、子ども名義の貯金って、成人するまでの期間で110万円以内じゃないと贈与税の課税対象ということ?



そうとも言えないよ。子どもが成人した時点で口座残高が110万円以上でも贈与税が課税されないようにするための対策を紹介するね!
お年玉やお祝い金を子供名義の口座で貯金していた場合は、「子供のお金」であるため社会通念上相当と認められるものであれば贈与税非課税です。ただし、額が大きい場合には贈与と判断されてしまう可能性があります。それらと一緒に、「親のお金である」児童手当や大学費用等の積立を行ってしまう場合には更に注意が必要です。
子ども名義の貯金で非課税枠をうまく利用する方法
対策1:毎年少しだけ贈与税を納税する
毎年、少しだけ110万円を超える贈与を行い、贈与税を納税する方法です。そうすることによって、お子さんが成人する以前に贈与したことの証明となります。
贈与税の計算方法は[基礎控除後の課税価格] × 税率 − 控除額 = 税額金です。以下の表を参照してください。
基礎控除後の課税価格 | 200万円 以下 | 300万円 以下 | 400万円 以下 | 600万円 以下 | 1,000万円 以下 | 1,500万円 以下 | 3,000万円 以下 | 3,000万円超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
- 贈与税における基礎控除後の課税価格
-
贈与税において、基礎控除とは年間に贈与される金銭や財産について、一定額までは非課税とする制度のことを指します。基礎控除後の課税価格とは、贈与された財産の価額から基礎控除額を差し引いた金額のことです。例えば、子どもに120万円の贈与をした場合、基礎控除の110万円を差し引いた10万円が、基礎控除後の課税価格となります。この10万円に対して贈与税が課税されます。
- 贈与税における控除額
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贈与税の税額を計算する場合、基礎控除後の課税価格に税率を掛けたものから、表1にあるとおりの控除額を差し引くことになります。



良かった!120万円子どもに贈与した場合は、110万円から足が出た10万円に対して10%の贈与税ってことだね!じゃあ1万円だ!



祖父が孫に500万円贈与した場合は以下のように計算するよ。
①基礎控除後の課税価格 500万円 – 110万円(基礎控除) = 390万円
③税額 390万円 × 20% – 25万円(控除額) = 53万円
対策2:おすすめ!毎年贈与契約書を作成する
毎年、贈与を行う時点で贈与契約書を作成します。そうすることによって、お子さんが成人する以前に贈与したことの証明となります。
贈与契約書を2部印刷の上、記入・捺印します。それらを贈与した人、贈与された人(未成年の場合は保護者)で管理してください。また、通帳の記帳をしておくと更に安心です。
税理士監修!贈与契約書フォーマットのダウンロードはこちら 自由にダウンロードしてご利用ください
対策3:おすすめ!貯金ではなく、ジュニアNISAで積立する ※2023年で終了
銀行口座での普通貯金や定期預金ではありませんが、金融庁が作った制度でジュニアNISAというものがあります。2023年が積立の最終年(運用は継続可能)でありラストチャンスです!年間80万円までの投資枠ですが、税制面でも非常に秀逸な制度なので活用を検討されてみてはいかがでしょうか?
本制度は、子どものための資産運用の制度であるため、対策1や対策2のような特別な手続きをしなくても贈与税は非課税となります。そして資産運用であるため金融商品(例えばS&P500に連動するインデックスファンド)によっては年間利回り約10%で増えていきます。※S&P500に連動するインデックスファンドの年間利回りは過去30年の実績であり、今後も保証されるわけではありません。



資産運用や投資は、ギャンブルのイメージ!やりたくない!



その価値観は多くの日本人が持っているけど、原因は日本の教育。
日本は金融教育をしてこなかったから…。でも、今は高校の家庭科で資産運用等、金融教育を受けているんだよ!NISAは政府お墨付きの制度だから、ちょっと勉強してみない?
資産運用の基礎知識とジュニアNISAの詳細については✓あわせて読みたい参照




本記事では、子ども名義の貯金というユースケースについて記載しております。そのため本記事での贈与税とは「一般贈与財産」に該当する内容です。「一般贈与財産」とは、財産の所有者が、相手に対して自由な意思で贈与した場合に該当する贈与財産のことです。例えば、財産を相手の口座に振り込んだり、土地や建物などの不動産を相手に譲渡した場合に当てはまります。一方、「特例贈与財産」とは、相続税や贈与税の特別な税率が適用される財産のことです。例えば、実子に対する教育費や住宅購入資金など、一定の条件を満たす場合には、贈与税が非課税もしくは軽減される特例措置があります。このような特例措置の対象となる財産を「特例贈与財産」と呼びます。
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